建設業許可を取ろうと「○○県 建設業許可 手引き」で検索すると、各都道府県が公開している分厚いPDFにたどり着きます。ただ、いきなり全部を読むのは大変です。
この記事は、どの都道府県の手引きにも共通する「最初に押さえる要点」と「読む順番・つまずきやすいポイント」を、建設業法・国土交通省のガイドライン・各都道府県の手引き(例:東京都「建設業許可の手引(令和7年度版)」)に基づいて編集部がまとめたものです。手引きを開く前にこの記事で全体像をつかむと、迷子になりにくくなります。
※本記事は一般的な制度の読み方を解説するものです。最終的な手続き・最新の様式・金額・添付書類は、必ず申請先の都道府県の公式手引き・窓口でご確認ください。 個別のケースで許可の要否や可否を判断するものではありません。(確認日:2026年6月14日)
手引きを読む順番(まずこの5ステップ)
手引きはボリュームがありますが、知りたいことは大きく次の順で並んでいます。この順で「自社はどうか」を当てはめながら読むのが近道です。
- そもそも許可は必要か(軽微な工事の線引き)
- どの許可を取るか(知事/大臣・一般/特定・業種)
- 要件を満たすか(許可の基準=5つの要件)
- 必要書類は何か(申請書+確認資料の全体像)
- どう申請するか(申請の種類・有効期間・変更届)
以下、それぞれの「読み方」を見ていきます。
① そもそも許可は必要?(軽微な建設工事の線引き)
建設業を営む場合、「軽微な建設工事」だけを請け負うときを除き、原則として建設業の許可が必要になります。手引きでも冒頭に置かれていることが多い、最初の確認ポイントです。
一般に「軽微な建設工事」とされるのは、次のようなものです(消費税込みで判断)。
- 建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円未満の工事
- 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または請負代金にかかわらず木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事
読むときの注意点(つまずきやすい箇所):
- 契約を分けても合算で見るのが原則です。1つの工事を2つ以上の契約に分けても、正当な理由がなければ各契約の合計額で判断されます。
- 注文者が材料を提供する場合は、その材料費(市場価格等)を請負代金に加えて判断します。
「自社の請け負う金額が線引きを超えるかどうか」がはっきりしないときは、申請先の窓口に相談するのが確実です。
② どの許可を取る?(3つの軸で決まる)
許可は1種類ではありません。手引きの「許可の種類・区分」の章は、次の3つの軸で読むと整理できます。
軸1:知事許可か、大臣許可か(営業所の場所で決まる)
- 知事許可:営業所が1つの都道府県のみにある場合
- 大臣許可:営業所が複数の都道府県にある場合
ここでいう「営業所」とは、見積・入札・契約などの実体的な行為を行う事務所を指します。単なる登記上の本店、入金・請求だけの連絡所、工事現場の事務所などは営業所に含まれない点に注意してください。
軸2:一般建設業か、特定建設業か(下請に出す金額で決まる)
元請として受けた工事を下請に出す金額が大きい場合は「特定建設業」、そうでなければ「一般建設業」という区分です。特定のほうが要件(とくに財産的基礎)が厳しくなります。
軸3:29業種のどれか(業種ごとに取る)
建設業の許可は29の業種ごとに受けます。土木一式・建築一式という「一式工事」と、各専門工事(大工・左官・とび土工・電気・管…など)は別ものです。一式工事の許可があっても、軽微でない専門工事を単独で請け負うには、その専門業種の許可が別に必要になる点は、特に誤解しやすいところです。
自社の状況で「どの区分・どの業種か」を整理したい方は、5つの要件を確認できる診断ツールもあわせてご利用ください。
③ 要件を満たすか(許可の基準=5つの要件)
手引きの中心となるのが「許可の基準」です。一般に、次の要件をすべて満たすことが求められます(詳細・最新は各都道府県の手引きでご確認ください)。
- 経営業務の管理を適正に行う能力(いわゆる「経管」。一定の経営経験を持つ常勤役員等がいること)
- 営業所技術者(旧:専任技術者)(営業所ごとに、業種に応じた資格・実務経験を持つ技術者を専任で置くこと。※令和6年12月13日施行の改正建設業法で「専任技術者」から名称変更されました。特定建設業では「特定営業所技術者」、両者の総称は「営業所技術者等」。要件・役割の中身はおおむね従来どおりです)
- 誠実性(請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと)
- 財産的基礎・金銭的信用(一般と特定で水準が異なります)
- 欠格要件に該当しないこと
加えて、社会保険への加入も許可の要件とされています(令和2年10月の改正で要件化)。
この5要件は「自社が満たしているか」を1つずつ確認するのが最大の山場です。まずはここで当たりをつけてから、証明資料の準備に進むのが効率的です。
自分の状況が5要件に当てはまるかをざっくり確認したい方は、建設業許可 5要件の診断が便利です。
④ 必要書類は何か(申請書+確認資料の全体像)
手引きには「申請書類・添付書類・確認資料の一覧」が載っています。様式(申請書本体)と、それを裏づける確認資料(経歴・資格・財務・社会保険など)の二本立て、というのが全体像です。
量が多いので、最初に「何を何部、どんな形で出すか」の全体像をつかむのがコツです。1枚ずつ集め始める前に、必要書類のリストで抜け漏れを防ぐと、二度手間が減ります。
全国共通の基本セットは、建設業許可(新規)の必要書類チェックリストで確認できます(県ごとに追加・差異がある点も整理しています)。
⑤ どう申請する?(申請の種類・有効期間・変更届)
申請には、新規・許可換え新規・般特新規・業種追加・更新などの種類があります。自社がどれに当たるかで、手数料や必要書類が変わります。
- 有効期間は5年です。期間が切れる前に更新申請を忘れないようにしてください。
- 許可後に商号・役員・営業所などに変更があったら、変更届を期限内に提出します。変更届が出ていないと、更新など他の手続ができないことがあります。
- 手数料は申請区分(新規・更新など)や知事/大臣で異なります。具体額は各都道府県の手引き・公式でご確認ください。
なお、申請手続の代理は、法律で行政書士または弁護士に限られています。
つまずきやすいポイントまとめ
- 営業所の定義:登記上の本店だけ・連絡所・現場事務所は「営業所」に当たらないことがある。
- 軽微な工事の金額の数え方:契約を分けても合算、材料提供は加算。
- 業種の選び方:一式工事の許可だけでは、軽微でない専門工事を単独で請け負えない。
- 法改正への追従:社会保険の加入要件化(令和2年)など、改正で要件が変わることがある。最新は公式で。
- 手数料は申請区分で変わる:一律ではない。
公式の手引きはどこで手に入る?
- 建設業許可の制度全般は、国土交通省の建設業の許可(建設業許可事務ガイドライン等)が基本です。
- 実際の様式・記入例・添付書類は、申請先の都道府県が公開している「建設業許可の手引き」を必ず確認してください。都道府県ごとに運用や提出方法が分かれる部分があります。
- 都道府県別の手続きの入口は、47都道府県の建設業許可ガイドから確認できます。
あわせて使うと早いツール
- 建設業許可 5要件の診断:自分の状況が要件に当てはまるかを確認
- 建設業許可(新規)必要書類チェックリスト:全国共通の基本セットで抜け漏れ防止
- 経営事項審査(経審)シミュレーター:許可取得後、公共工事を目指す方向け
本記事は一般的な制度解説であり、個別の許可の可否を判断するものではありません。最新の制度・様式・金額・添付書類は、申請先の都道府県の公式手引き・窓口で必ずご確認ください。(編集部・確認日:2026年6月14日)
出典:建設業法、国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」、各都道府県の建設業許可の手引(例:東京都「建設業許可の手引(令和7年度版)」)
